宇宙X線観測衛星 「ひとみ (ASTRO-H)」 打ち上げ成功

イベント 2016/02/17

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イラスト 池下章裕氏/提供 JAXA

宇宙からくるX線を最高精度で観測し、宇宙の成り立ちと熱く激しい宇宙に潜む物理現象を解明することを目指す日本のX線天文衛星 ASTRO-H は、2016年2月17日にJAXA種子島宇宙センターから H-IIA ロケット30号機によって打上げられ、「ひとみ」と命名されました。

「ひとみ」は、JAXAを中心に日本の大学・研究機関・企業の力を結集し、アメリカNASAやヨーロッパ(ESAおよびオランダ)、カナダなどの協力を得て開発されました。高温の天体から出るX線の蛍光輝線をこれまでの30倍もすぐれた能力で分光して重元素の組成やその速度分布を初めて詳しく得ることができ、また、硬X線や軟ガンマ線(*)までの広い帯域を過去最高の感度で観測して宇宙における粒子加速の謎をかつてない精度で探るなど、4種6台の検出器を搭載して熱い宇宙の謎に迫ります。

衛星全体のリーダーであるJAXA宇宙科学研究所の高橋教授をはじめ、軟X線分光検出器の開発に中心的な役割を果たしている満田教授と山崎准教授は、当学の物理学専攻にも所属しており、本郷キャンパス物理学教室の中澤講師および牧島名誉教授(ビッグバンセンター兼任)は、硬X線撮像検出器および軟ガンマ線検出器の開発に中心的な役割を果たしてきました。また、各研究室に所属する当専攻の博士研究員や大学院生がその開発の最前線に立って、衛星計画の実現に大きく貢献しております。そして今後は、衛星の運用にも携わることになります。

「ひとみ」は電源や姿勢、観測装置の立ち上げに1ヶ月ほどをかけたのち、いよいよ試験観測、そして本格的な科学観測に入る予定です。全く新しい目で宇宙を見ることでどのような新しい発見があるか、大変興味がもたれます。

(*) 硬X線はエネルギーの高いX線のこと。ASTRO-Hプロジェクトでは、10 keV以下のX線を軟X線、10 keVからおよそ100 keVの光子を硬X線、100 keVからおよそ600 keVの光子を軟ガンマ線と呼んでいる。

文責:東京大学大学院理学系研究科 物理学専攻 講師 中澤知洋


ASTRO-Hプロジェクトサイト http://astro-h.isas.jaxa.jp
ASTRO-H特設サイト     http://fanfun.jaxa.jp/countdown/astro_h/index.html

高橋研究室 高橋 忠幸 教授、渡辺 伸 助教
満田研究室 満田 和久 教授、竹井 洋 助教
山崎研究室 山崎 典子 准教授
中澤研究室 中澤 知洋 講師、牧島一夫 名誉教授

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