研究・教育 / 知の物理学研究センター
知の物理学センターが扱うデータは物理原理が生成するデータからなるという点で、AI が取り扱うビックデータとは本質的に異なっています。素粒子はファンダメンタルシメトリーが、物性は対称性の破れが、宇宙は構造形成されたオブジェクトがデータを生み出しています。これに対して自然言語、音声、インターネット上の情報は人間の脳という複雑系が生成するデータとなっています。知の物理学研究センターでは、これらの本質的に異なるデータを横断的かつ統合的に研究することで、従来の AI 研究のフロンティアを拡大するだけでなく、物理学の研究フロンティアの拡大を目指しています。また、そのような研究を通じて、基礎学理から応用までを俯瞰できるトップ人材の育成を行っています。
現在の AI はアーキテクチャが複雑で機械自らが強化学習するために、結果が得られてもその原因や信頼性を説明することができません。他方で、自動運転、医療、金融、司法判断などおよそ説明責任が求められる分野において、機械学習・深層学習の動作原理を根本的に理解する必要性が急速に高まっています。AI 分野で現在研究されている「説明可能な AI」(Explainable AI, XAI) は、得られた結果を説明できるが、その根拠は経験的統計データでしかありません。これに対して、知の物理学は物理原理に基づいた理解から出発することで、原因から結果に至る因果関係を演繹的にモデル化するなど、検証可能かつ予知能力のある理論構築を目指すことで、上記の社会的ニーズにも答えられると期待されています。
<知の数理物理と応用>