生物物理

研究室研究者紹介研究テーマ
能瀬研究室能瀬 聡直 教授脳・神経系の生物物理
岡田研究室岡田 康志 教授生物物理学、細胞生物学、一分子生物学
古澤研究室古澤 力 教授生物システムの普遍的性質に関する研究
竹内研究室竹内 一将 准教授非平衡物理学、アクティブマター、微生物集団の統計物理
川口研究室川口 喬吾 准教授生物物理・非平衡物理・機械学習

生物物理学は物理学的な観点や手法を用い、生命現象の基本原理を究明することを目指す研究領域であり,その範囲は,蛋白質や核酸などの分子レベルから脳・神経系の機能など高次の生命現象を扱うものまで多岐にわたっています。
また,時間軸で見てみると,ピコ秒域の生体分子の運動から40億年に及ぶ生物進化までもが生物物理学の対象です。生物物理学は読んで字のごとく物理学と生物学との間の学際的な研究領域ですが,その取り組み方の基本は物理的立場にあり,多くの物理学者がこの分野で活躍しています。
今後の21世紀においては,このような学際的研究領域に物理学がいかに関わって行くかが大きな課題の一つであり,若い意欲的な諸君の活躍が望まれています。

能瀬研究室では脳・神経系の生物物理を研究しています。脳・神経系は多数の神経細胞がシナプスという構造を介して連絡した複雑なネットワークです。このなかを電気信号が特定のパターンで伝わることが、脳機能を支えていると考えられていますが、その仕組みはほとんど謎のままです。われわれは、神経ネットワークがいかにして形成され、どのような原理にもとづいて機能するのかを、細胞・分子レベルで理解することを目標とし、モデル動物を用いた研究を行っています。一見複雑な脳のネットワークも、無秩序に張りめぐらされるのではなく、遺伝子プログラムという設計図に従って、規則正しく順序だって形成されることが最近分かってきました。われわれは、神経の正確な配線に関わる遺伝子の同定・解析を通じて、脳の設計図の解明をめざしています。また、記憶学習において顕著なように、神経ネットワークは、環境など外界からの情報に応じて、自分自身を変化させるという驚くべき性質をもっています。われわれは、その鍵を握ると考えられているシナプス可塑性(入力に応じて、シナプスの性質が変わること)の分子基盤も探っています。このため、バイオイメージング技術を用い、生きた動物の中でシナプスの構造や分子の動態を観察したり、マイクロアレイ技術を用いシナプス入力に応じて新たに発現が誘導されるような遺伝子を大規模に探索したりしています。

12図 神経細胞のイメージング装置

樋口研究室では、神経や筋肉で働くモータータンパク質の運動を単一分子レベルで世界最高精度の測定をし、新しい分子運動メカニズムを提案しました。さらに細胞やマウスの中の1分子の挙動を1nmという精度で観察することに成功し、細胞を新しい物理学的視点で捉えることに成功しました。現在の重点研究テーマは、精度をさらに数Åに上げ神経や細胞で働くタンパク質1分子の動きを原子レベルで捉えること、および細胞内やマウス個体で起こる複雑な運動を網羅的に解析して、細胞や個体機能の普遍原理を解明することです。たとえば,細胞内をモーター分子によって輸送される小胞は,短時間では方向性のあまりない一見ランダムに見える運動であることが我々の研究でわかった.ところが,長時間経過すると小胞は核の周りに集まるといった方向性のある輸送を達成した.小胞の運動だけでなく神経における記憶を形成するまでの過程も揺らぎに支配されるに違いない。そこで「方向性」と「ランダム性」の寄与が時間と空間とともにどのように変化するのかをモデル化と数式化を行い、物理モデルの構築をおこなう。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加