福嶋研究室 藤本悠輝さんが日本物理学会 若手奨励賞(第23回核理論新人論文賞)を受賞しました。

知の物理学研究センター





福嶋研究室 藤本悠輝さんが、2022年日本物理学会理論核物理領域:若手奨励賞(第23回核理論新人論文賞)を受賞しました。おめでとうございます!快挙に祝意を述べるとともに、以下に受賞理由を転載いたします。

受賞者:藤本悠輝 (東京大学理学系研究科物理学専攻)

著者:Yuki Fujimoto (対象者), Kenji Fukushima, Koichi Murase
発行雑誌:Physical Review D 98, 023019 (2018)
論文題目:Methodology study of machine learning for the neutron star equation
of state

著者:Yuki Fujimoto (対象者), Kenji Fukushima, Koichi Murase
発行雑誌:Physical Review D 101, 054016 (2020)
論文題目:Mapping neutron star data to the equation of state using the deep
neural network

著者:Yuki Fujimoto (対象者), Kenji Fukushima, Koichi Murase
発行雑誌:Journal of High Energy Physics 2021, 273 (2021)
論文題目:Extensive studies of the neutron star equation of state from the deep
learning inference with the observational data augmentation

研究題目:「深層学習を用いた中性子星物質の状態方程式の決定」
英文題目:''Mapping neutron star data to the equation of state using the deep
neural network''

 

授賞理由:
 核物質の状態方程式は、中性子星の構造を決定づける最も基本的な物理量である。
特に実験でアクセスできない高バリオン密度領域における核物質の状態方程式や、
中性子のみからなる物質及び電子、ハイペロンも含めた中性子星物質の状態方程式を
決定することは、原子核物理学及びハドロン物理学の最も重要な課題の一つである。
逆に、中性子星の状態方程式を精度よく決めることができれば、それが原子核物理学や
ハドロン物理学のモデルに強い制限を与えることができる。
 本論文で藤本氏は、多層ニューラルネットワークによる機械学習、いわゆる深層学習を
用いて、中性子星の観測データから中性子星物質の状態方程式を直接導出する手法を開発
した。このようなアプローチは、ベイズ統計に基づく方法と相補的であり、格子QCDなどの
第一原理計算が困難で模型依存性が大きい場合にも有効な手法となることが期待される。
そのようにして得られた状態方程式は、従来の原子核モデルに基づくものやベイズ統計に
よるものと矛盾がないことが示された。また、状態方程式から計算された中性子星の
潮汐変形率(tidal deformability)が連星中性子星合体による重力波の観測から
得られた値と矛盾しないということや、エネルギー密度がそれほど大きくない領域で
弱い一次相転移が存在する可能性がある、といった興味深い結果も議論されている。
さらに、学習過程におけるインプットにノイズを加えてデータ数を増大させるデータ
増大法(data augmentation)により過学習を抑制できるということも、中性子星物質の
状態方程式との関連から確認された。このように、本論文で開発された手法は高バリオン
密度領域を含む核物質の状態方程式の研究において先駆的かつ独自的なものであり、
今後の中性子星の物理の発展に大きく貢献することが期待される。
 以上のことから、本論文は日本物理学会若手奨励賞に相応しいと判断する。

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