髙木英典 教授 最終講義のお知らせ(3月11日)
コロキウム・談話会 2025/01/28
演 題: 物質中の電子が示す多彩な顔
日 時: 2025年3月11日(火) 15:00~16:30
会 場: 小柴ホール(理学部1号館)
YouTube配信:https://youtube.com/live/3b10rpPRKt4
自由参加、登録不要になります。
1986年11月、銅酸化物の高温超伝導のマイスナー効果(反磁性)が20Kをはるかに超える高温まで続くのを(おそらく世界で最初に)目の当たりにした。電子は集団になると何をするかわからない。その驚きと感動に支えられて、相互作用する電子が形成する多彩な顔(相)を探索してきた。遷移金属化合物の(狭い)最外殻d軌道に閉じ込められた電子は、電子間の強いクーロン反発を避けるために強く絡み合う。その結果、電荷・スピン・軌道の自由度を内包する、複雑で多彩な電子液体相や固体相が形成される。最初は、高温超伝導(超流動相)の顔をもつ銅酸化物だけが舞台だった。機構解明の脈略で、超伝導と競合/共存する隣接相を探索した。すぐに、複雑で、不思議な(擬ギャップ相のような)電子相が隠れていることが明らかになり、もっと多くの面白い相を見つけたくなった。銅からNiやVなど3d遷移金属化合物へと探索の舞台を拡げた。金属絶縁体転移の量子臨界相、重い電子相、量子スピン液体相などを見つけて、多彩な顔とその面白さを確立する一助にはなったと思う。物理教室に着任した2010年前後から、3dからIrに代表される5d(4d)遷移金属化合物へと舞台をさらに拡げ、重元素に特有の大きなスピン軌道相互作用が誘起する電子相を開拓した。3d研究では世の流行に乗った感が強かったが、5dで初めて自分色の流れを世に発信できた気がする。ただ、一番の期待の顔、Kitaev量子スピン液体の発見、は「かもしれない」レベルにとどまる。今後の進展に期待したい。 回顧録をお話しすることで、これまで研究の苦楽を共にしてくれたスタッフ、ポスドク、学生の皆さんに謝意を表したい。同時に、それが今後の新物質研究を考える一助になれば幸である。 |
■当日の注意
・当日体調不良の方は来場をお控えください。
・マスク着用と消毒にご協力をお願いします。