2025年度 前期 物理学教室コロキウム

コロキウム・談話会 2025/02/10

第151回 コロキウム

【日時】2025年6月20日(⾦)17:00-18:30
【講演者】酒井 崇匡 ⽒ (東京⼤学⼤学院⼯学系研究科)
【場 所】小柴ホール
【タイトル】高分子ゲルの精密な物理学

June 20,17:00-18:30
 Department colloquium by SAKAI Takamasa. 
(Development of Bioengineering School of Engineering, The University of Tokyo.)


ハイドロゲル(以下ゲルと略)は、多量の水で膨潤した高分子ネットワークであり、水を媒介として外部との物質交換が可能である。その生体軟組織と類似した組成と特性から、様々なバイオマテリアルとしての応用が期待されている。バイオマテリアルとして、ゲルを用いる際には、生体適合性や力学特性はもちろんのこと、ゲル化時間や生体接着性、生体内での膨潤度、分解時間など様々な特性が精密かつ独立に制御される必要がある。しかしながら一般に、ゲルの構造は不均一であり、物性制御は難しく、バイオマテリアルとしての応用は限定的であった。

それに対して、我々は、構造明確なゲルの合成に成功し、世界に先駆けてゲルの構造・物性相関を明らかにする一連の研究を行なってきた。近年では、負のエネルギー弾性や、浸透圧の普遍的状態方程式などをゲルに特有の現象を発見した。さらに、これらの知見を基盤に、瞬時止血ゲルや細胞足場用ハイドロゲルといった医療デバイスへ展開し、動物試験レベルで有効性を実証している。

本講演では、構造明確化によって初めて観測可能となったゲルの新奇物性を概観するとともに、「物理と医療の相性が良い」ことを生かした、止血剤/再生医療足場材の開発や今後の展望を論じる。

 



第152回 コロキウム

【日時】2025年7月25日(⾦)17:00-18:30
【講演者】川上 則雄 ⽒ (理化学研究所 基礎量子科学研究プログラム、立命館大学大学院理工学研究科)
【場 所】小柴ホール
【タイトル】強相関系の物理とハバードモデル ~so simple yet so rich~

July 25, 17:00-18:30
 Department colloquium by  KAWAKAMI Norio. 
(Fundamental Quantum Science Program, RIKEN

 


第149回 コロキウム

【日 時】2025年4月11日(金)17:00-18:30
【講演者】山﨑 雅⼈ ⽒ (東京⼤学⼤学院理学系研究科)
【場 所】理学部4号館1220号室
【タイトル】量子重力とワームホールの謎

 April 11, 17:00-18:30
 Department colloquium by YAMAZAKI Masahito. 
(Department of Physics,The University of Tokyo.) 

時空の異なる点をつなぐワームホールはその奇妙さゆえしばしばSFなどで取り上げられ人々を魅了してきた一方で、専門的な研究対象としてはみなされなかった時期も長かった。しかし近年の量子重力理論や超弦理論の研究においては、ブラックホールの情報喪失問題やホログラフィーなどに関連してワームホールが活発に議論されている。本講演では、量子重力理論や超弦理論においてワームホールがどのような謎をもたらすのか、またそこからどのような可能性が示唆されるのかを具体的な研究を例に説明したい。また、ワームホールの効果を観測的に探索する可能性についても議論したい。

 
 

第150回 コロキウム

【日 時】2025年5月9日(金)17:00-18:30
【講演者】鈴⽊ ⼤介 ⽒ (東京⼤学⼤学院理学系研究科)
【場 所】小柴ホール
【タイトル】RIビームによる原子核・核物質研究の新展開

 May , 17:00-18:30
 Department colloquium by SUZUKI Daisuke. 
Department of Physics,The University of Tokyo.)


原子核は私たちの身の回りにある物質の基本的な構成要素の一つであり、現代社会における原子核の応用は多岐にわたる。しかし、身近な存在でありながら、原子核は量子色力学の低エネルギー極限における難解で奥深い量子多体系であり、その構造とダイナミクスをめぐる研究は原子核物理学の最もアクティブなフロンティアの一つである。近年、理研RIビームファクトリーをはじめとするRIビーム施設の技術革新により、地上には存在しない短寿命のエキゾチック原子核の実験研究が飛躍的に進展した。中でも、陽子・中性子数の非対称性(アイソスピン)がもたらす多彩な物理現象は大きな注目を集めている。またアイソスピンの物理はミクロな原子核にとどまらず例えば中性子星のようなマクロな天体中の核物質においても重要な役割を果たすことが明らかになってきた。本講演では、RIビームによる原子核・核物質研究の潮流と世界各地で建設が進むRIビーム施設の現状を紹介する。

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