超高速・超低省電力で動作する不揮発量子スイッチング素子
研究成果 2026/05/18
東京大学大学院理学系研究科のTsai Hanshen特任助教、松田拓也特任助教(研究当時)、中辻知教授らの研究グループは、同研究科有田亮太郎教授(兼:理化学研究所 創発物性科学研究センター チームディレクター)、同大学大学院工学系研究科の竹中充教授、清水宏太郎助教、飯塚哲也教授、および同大学物性研究所の三輪真嗣准教授、ならびに理化学研究所創発物性科学研究センターの近藤浩太上級研究員(研究当時)(現:大阪大学先導的学際研究機構 准教授)らと共同で、反強磁性体Mn₃Snを用い、40ピコ秒(ピコは1兆分の1)という極めて短い電気パルスによって磁気状態(2値)を書き換えられる、すなわち、スイッチングできることを示しました。現在のCPU、GPUでは処理速度が高速になると通常、消費エネルギーが極端に上がるためナノ秒(ナノは10億分の1)以下の動作速度とすることは困難でした。実際、その1,000倍のスピードのピコ秒スイッチングの実現に向けて様々な機構が検討されてきましたが、数百度もの温度上昇による耐久性の観点から課題が残されており、ピコ秒スイッチングは実用化に向けてなお研究開発段階にあります。本研究で用いた反強磁性体デバイスでは、熱に依らない角運動量移行に基づくスピン軌道トルクにより、発熱の大幅な低減と高い耐久性を両立したピコ秒スイッチング動作が可能であることを示しました。これは、従来検討されてきたピコ秒スイッチング機構では到達できない唯一の方法です。さらに、通信波長帯レーザーと光電変換器を組み合わせて生成した60ピコ秒の光電流パルスによっても、同様のスイッチングが可能であることも実証しました。これは、光信号を電気信号へ変換し、そのまま不揮発メモリへの書き込みに接続する「スピントロニクス光電変換」の基礎実証に相当します。本研究成果は、国際科学雑誌『Science』の2026年5月14日付(米国東部夏時間)オンライン版に掲載されました。
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