立川 裕二  〈たちかわ ゆうじ〉

 

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    東京大学 理学系研究科 物理学専攻

教授

 

経歴(卒業年度・在籍時の研究分野・現在のご所属など)


1999年秋: 進学振り分けののち物理学科に。
2002年春: そのまま余り何も考えず、大学院に進学、素粒子論を専攻。
2006年秋: 博士号取得後、プリンストン高等研究所でポスドク研究員に。
2010年秋: 柏の数物連携宇宙研究機構(IPMU)で任期付き助教に着任。
2012年春: 本郷の物理学科の准教授に着任。
2016年春:柏の数物連携宇宙研究機構(IPMU)の教授に着任。
 
物理学科・専攻を選んだ理由

いつからかは判りませんが、高校の頃には、将来は数学か物理を専門にしたいなあと思っていました。ですから、駒場に入って、問題だったのは、どちらを選ぶか、ということでしたが、しばらく両方を勉強しますと、数学では論理的に一歩一歩厳密に証明をする必要があるけれども、理論物理では多少論理に問題があっても、えいや、と「直観」なる曖昧なもので結論に至って良いということがわかり、僕には物理のほうが向いているだろうと思ったような記憶が有ります。

キャリア形成の際に物理学的考え方、手法などが役立った点

僕は研究対象には物理学的考え方は適用しますが、人生には適用しません。勿論、僕らの体も、標準模型の運動方程式にしたがって発展しているので、キャリア形成も物理学の法則に従っていますが、そういう問題ではないでしょう。また、理学部や物理学科の運営に物理学的考え方が適用されるなら、随分いろいろと改善されるかもしれませんが、誰も適用しようとはしないようです。

学部・専攻在籍時の同級生同士や教員との交流の場について、思い出など

当時、学科の図書館は第二食堂南隣のプレハブに入っていたのですが、ある日、棚の奥のほうに貴重な19世紀以前の学術雑誌の全巻セットがいくつもあることに気づきました。明治期に学科が出来た際にイギリスの古本屋で買ったのでは無いかと思います。夏目漱石の猫に出てくる首縊りの力学は、寺田虎彦の随筆に、大学で古い  Philosophical Magazine をみていて面白いから漱石に紹介した、とあるのですが、一日ほど費やしてとうとうそれを発見したときは、虎彦もまさに僕の持っているこの本のこの頁をめくったのだろう、と、感激したのを覚えています。また、別の巻号には、「ニュートン君のプリンキピアが近々出版されるから注文を受け付ける」と宣伝が載っていてびっくりしたりもしました。こういう貴重な古書が、当時は鍵もかけずに置いてあったのですから、びっくりです。

あれから十五年ほどたって、最近はこれら古い本はすべてオンラインでインターネット上で読めるのですけれども、それも、何だか、味気ない気もします。今でも、図書館で鍵を開けてもらえば、実物を読める筈です。

在校生に対するメッセージ

折角、比較的平和な時期に、比較的平和な地域に生まれて、大学生になったのですから、社会通念上やることになっていることではなくて、自分の心からやりたいことを、しばらくやってみてはどうか、と思います。数年後の自分のために、いろいろ頑張る、というのも一つの方法ですが、でも、それまでに、事故や急病で死ぬかも知れませんからね。その時その一瞬を楽しまなくてはなりません。僕にとっては、それの大きな部分は、たまたま学問をすること、狭くは、場の量子論をより良く理解する、ということでしたが、読者のあなたにとって、それは何でしょう。

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