物理学教室 談話会(6月9日)

コロキウム・談話会 2023/05/16

【日 時】2023年6月9日(金) 17:00~18:00
【講演者】井上圭一氏(東京大学・物性研究所)           
【場 所】東京大学理学部1号館小柴ホール
【タイトル】「微生物ロドプシンがもたらす光生物学の新地平」 

第21回 (2019年) サー・マーティン・ウッド賞受賞記念講演

 微生物ロドプシンは細菌やアーキア、単細胞真核微生物のほか、巨大ウイルスが持つ、光受容型の膜タンパク質ファミリーである。これらは膜貫通型の7本のヘリックスが作る空間の内部に、all-trans型のレチナール発色団を結合した構造を持つ。そして、このレチナールが光を吸収すると13-cis型へと異性化し、この変化をトリガーとして様々な生理機能が光で発現する。微生物ロドプシンの機能は非常に多岐にわたり、ゲノム解析研究の進展とともに光駆動型のイオンポンプや、光開閉式チャネル、走光性センサーなどの機能を持つ分子が次々と発見され続けている。そして近年の研究から、光が届く領域に棲む微生物の半分以上が微生物ロドプシンを用いて太陽光を利用していると考えられており、利用する光の量は光合成を凌駕すると言われている。また最近では動物の神経活動を光で操作する光遺伝学(オプトジェネティクス)の中心的な分子ツールとして微生物ロドプシンが用いられている。その中で我々は、光エネルギーを使って細胞外にNa⁺イオンを輸送するNa⁺ポンプ型ロドプシンや、細胞内にH⁺を輸送する内向きH⁺ポンプ型ロドプシンを新たに発見し、分光計測や三次元構造解析、量子化学計算による機能発現の分子メカニズム研究や、ゲノムデータマイニングや機械学習法を用いた高機能性分子の探索・開発などを行っている。講演ではより最近のエキサイティングな研究例や動向についても紹介する。


※小柴ホールのホワイエにコーヒーとお菓子を用意しています。どうぞご利用下さい。



 

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