物理学教室 談話会(10月11日)

コロキウム・談話会 2023/09/25

【日 時】2023年10月11日(水)16:50~18:20
【講演者】田仲由喜夫教授
(名古屋大学 大学院工学研究科 )
【場 所】理学部1号館233室
【タイトル】非従来型超伝導体のエッジ状態の解明からトポロジカル超伝導の理論へ

多くの金属では、伝導電子が低温において電子対を形成してボース凝縮をすることで、低温で超伝導状態になることが知られている。一方、超伝導素子の電気伝導特性はトンネル効果により支配される。トンネル効果の理論は従来型の金属超伝導体に関しては1960年代に確立していたが、銅酸化物超伝導体などの非従来型超伝導体に関しては長年存在しなかった。90年代非従来型超伝導体接合における境界状態(エッジ状態)の理論的解明をすることで、電子のトンネル効果である準粒子トンネル効果、電子対(クーパー対)のトンネル効果であるジョセフソン効果の理論が導出され、アンドレーエフ束縛状態とも呼ばれるギャップレスエッジ状態に果たす役割が明確にされた[1]。また非従来型超伝導体接合において、エッジ状態が超伝導体から常伝導金属へ浸入する近接効果と呼ばれる界面における量子干渉効果において、常伝導金属中の準粒子状態密度がゼロエネルギーでピークを持つ新奇な近接効果である異常近接効果の存在を明らかにされ[2]、この起源が同時刻で対を形成しない特異な電子対である奇周波数電子対に由来することが理論的に解明された[3]。さらにエッジ状態の持つトポロジカルな起源が、ハミルトニアンの有するトポロジカル不変量という整数に帰することが明らかにされた[4]。またトポロジカル絶縁体における超伝導体接合の理論研究において、マヨラナ準粒子と呼ばれる生成と消滅の区別ができないギャップレスエッジ状態を介するトンネル効果の理論の基礎が構築された[5]。以上の成果は、トポロジカル超伝導と呼ばれる分野の発展に先駆的な貢献を行うものである[6-7]。講演では最後にマヨラナフェルミオンを超えた非自明なエニオンであるパラフェルミオン、フィボナッチエニオンについて簡単に紹介する[8]。



[1] Y. Tanaka and S. Kashiwaya, Phys. Rev. Lett., 74, 3451, 1995; Phys. Rev. B 56, 892, 1997.
[2] Y. Tanaka and S. Kashiwaya, Phys. Rev. B, 70, 012507, 2004.
[3] Y. Tanaka and A. Golubov, Phys. Rev. Lett. 98, 037003, 2007.
[4] M. Sato, Y. Tanaka, K. Yada and T. Yokoyama, Phys. Rev. B 83, 224511, 2011.
[5] Y. Tanaka, T. Yokoyama and N. Nagaosa, Phys. Rev. Lett., 103, 107002, 2009.
[6] Y. Tanaka, M. Sato, N. Nagaosa, J. Phys. Soc. Jpn. 81, 011013, 2012.
[7] 超伝導接合の物理 田仲由喜夫著 名古屋大学出版会 2021年.
[8] D. J. Clarke, Nat. Phys. 4, 1348 (2013), R. Mong, Phys. Rev. X, 4, 011036 (2014).

 

関連リンク :
  • このエントリーをはてなブックマークに追加