安定でエコな心臓収縮を実現する仕組みを心臓のタンパク質、心筋ミオシンから発見

研究成果 2021/06/01

私たちが生きていく上で大切な心臓の収縮は、心筋ミオシンによって担われています。その分子の構造は骨格筋ミオシンと似ていることから、心臓は骨格筋と似た仕組みで収縮していると考えられてきました。しかし、骨格筋の収縮とは大きく異なり、心臓の収縮には強く安定した収縮とそれに続く迅速な弛緩による周期的な血液の拍出が求められます。

そこで東京大学大学院理学系研究科物理学専攻の茅助教らは、ミオシン15分子程度が集合したミオシンフィラメントの発する力やミオシン1分子の構造変化ダイナミクスを、光ピンセットを用いて計測し、心筋ミオシンと速筋ミオシンの結果を比較しました。心筋ミオシンは、収縮する方向への構造変化(パワーストローク)と逆向きの構造変化(リバースストローク)を起こし、その頻度が負荷の増加に依存して増えることを1分子レベルで初めて示しました。さらにシミュレーションモデル解析から、このリバースストローク特性は、心臓機能で重要な安定した収縮力とその後の迅速な弛緩や、ATPの消費を抑えるエコな収縮を実現する心臓機能に特化した心筋ミオシン特有の分子機能であることがわかりました。

心筋ミオシンの変異は肥大型心筋症の主な原因の1つであることから、こうした成果が心筋症発症の解明や治療薬の開発に役立つと期待しています。

詳細については、以下をご参照ください。

関連リンク : 2021年度 生物物理(A7)
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