トポロジカルな点が、細菌を引き寄せ、コロニーの3次元成長を促進する

研究成果 2022/12/22

細菌は、しばしば固体表面に付着し、バイオフィルムと呼ばれる三次元的な塊を形成します。排水溝の“ぬめり”や歯垢などが身近な例ですが、医療器具では細菌感染、産業では腐食などの原因となるため、バイオフィルム形成過程の理解と制御は重要な課題です。一般に、細菌が固体表面上で増殖する際、コロニーと呼ばれる細菌の塊は、はじめは表面上を二次元的に成長し、ある程度細菌が密集すると三次元的な成長に切り替わります。この過程は、従来は力学的な観点から考察されてきました。

東京大学大学院理学系研究科の嶋屋拓朗大学院生(研究当時)と竹内一将准教授は、非運動性の大腸菌を用いて、表面を一様に覆うコロニーが三次元成長する際の初期過程を観察し、細菌細胞の向きの秩序が三次元成長に影響を及ぼすことを見出しました。

大腸菌などの多くの細菌は棒状の形をしており、密集すると棒の向きが揃いますが、ところどころ向きを揃えられない点が生じてしまい、その点は「トポロジカル欠陥」と呼ばれています。

本研究により、トポロジカル欠陥が生じた箇所ではコロニーが僅かに隆起して高くなることが明らかとなり、それは欠陥が周囲の細胞を引き寄せるからだとわかりました。細胞を引き寄せる機構についても、細胞が基板に対して傾くことで生じる極性秩序に基づき、説明に成功しています。このように、細菌のコロニー成長を支える物理法則の理解を深めることで、バイオフィルム形成過程の理解や制御に近づけると期待されます。

詳細については、以下をご参照ください。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加