歪みによる異常ホール効果のスイッチングに成功

研究成果 2022/08/19

東京大学大学院理学系研究科 中辻 知 教授、ムハンマド イクラス 特任研究員、肥後友也 特任准教授の研究グループは、カナダ ブリティッシュコロンビア大学 サヤック ダスグプタ 特任研究員、米国 コーネル大学 ブラッド ラムシャウ 助教、フローリアン セイス 大学院生 大学院生の研究グループ、中央大学 橘高俊一郎 准教授、米国 ジョンズホプキンス大学 オレグ チェルニショフ 教授、英国 バーミンガム大学 クリフォード ヒックス グループリーダーからなる国際共同研究グループと共同で、磁化をほとんど持たないにもかかわらず、室温で巨大な異常ホール効果を示す反強磁性体Mn3Snにおいて、一軸性の歪み(ひずみ)によって異常ホール効果の符号が制御可能であることを実証しました。

反強磁性体はスピンの応答速度が強磁性体の場合に比べて100 ~ 1000倍速いということのみならず、磁化が非常に小さいため素子化した際に漏れ磁場の影響を受けないという特性を持っています。そのため、不揮発性メモリの有力候補である磁気抵抗メモリ(MRAM)に応用することにより、テラヘルツ帯(ピコ秒台)で超高速駆動する、超高密度なMRAMの実現が期待できます。その一方で、磁化が非常に小さいという上記の利点は、反強磁性体への情報の書き込み(信号の制御)が困難であるという課題にもなっていました。本研究により見いだされた一軸性の歪みを用いた高効率な信号の制御手法は、磁場や電流といった従来の磁性体における信号の制御手法を補完するものであり、反強磁性体のスピントロニクス技術への応用展開の幅を広げる成果になりました。

詳細については、以下をご参照ください。

関連リンク : 2022年度 物性実験(A4)
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