二次元量子臨界ボーズ気体の実現

研究成果 2024/05/15

独マックスプランク固体研究所の松本洋介研究員らと、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻の北川健太郎講師(現物性研究所准教授)と髙木英典教授(兼:独マックスプランク固体研究所長)からなる研究グループは、量子磁性体を用いて理想的な2次元希薄ボーズ気体の特異な振る舞いを初めて実験的に実証しました。ある種の量子磁性体は、飽和磁場付近において低密度のボソンの集まりと見なすことができ、磁場を変えるだけでそのボソン密度を精密にコントロールできることが知られていました。ボソンは、ボーズ-アインシュタイン凝縮(BEC)として知られる興味深い現象を引き起こしますが、純粋な2次元磁性体の場合、低次元特有のゆらぎのためBECの代わりに、ベレジンスキー・コステリッツ・サウレス(Berezinskii-Kosterlitz-Thouless, BKT)転移として知られる、トポロジカル相転移を示します。今回、国際研究チームは、ハイゼンベルグ磁性体YbCl3を用いて、飽和磁場近傍における熱力学的性質、比熱と磁化を調べました。その結果、希薄極限における量子臨界2次元ボーズ気体として驚くほど正確に記述されることを発見しました。そこでは、ボソン-ボソン斥力に2次元ボーズ気体に特徴的な対数補正が働き、希薄極限において斥力相互作用が減少し、極めて高い熱伝導度を示すことも発見しました。ボゾンの数を増やしていくと極めて小さな層間結合によって3次元BECを示すことも定量的に明らかになりました。この2次元極限で実現したBECにBKT転移の兆候を示す特徴が有るのか、またさらに新奇な状態の可能性はあるのか、今後、本物質を舞台として、2次元ボーズ気体におけるさらなる新現象の探求が本格化することが期待されます。

詳細については、以下をご参照ください。

関連リンク : 2024年度 物性実験(A4)
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