放射光でついに見えた磁気オクタポール

研究成果 2021/09/23

物質中の電子が持つスピンを起源とする高い熱電変換効率や大きな異常ホール効果は、これまで電子スピンが揃った状態でのみ起こると考えられてきました。その一方で、スピンが互いに打ち消し合うように整列した反強磁性と呼ばれる状態でも、大きな効果が報告されており、スピンは打ち消し合っているにも関わらず、何らかの状態が打ち消し合わずに向きを揃えていると考えられていました。これは、「磁気八極子」として理論的に予測されていましたが、実験的には検出されていませんでした。

東北大学金属材料研究所の木俣基准教授、野尻浩之教授と高輝度光科学研究センター(JASRI)の雀部矩正博士研究員、小谷佳範主幹研究員、横山優一博士研究員、東北大学大学院理学研究科の栗田謙亮大学院生、是常隆准教授、物質・材料研究機構の山崎裕一主幹研究員、高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所の中尾裕則准教授、雨宮健太教授、京都大学複合原子力科学研究所の田端千紘助教、東京大学大学院理学系研究科の中辻知教授、東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センターの中村哲也教授らの研究グループは、磁石のミクロな起源である電子スピンが互いに打ち消しあう反強磁性と呼ばれる状態の中に潜んだ「磁気八極子(磁気オクタポール)」を放射光X線実験から明らかにしました。

今回検出された磁気八極子は、従来のスピンよりも高速制御が可能で、スピントロニクスデバイスなどの大幅な高速化にも貢献すると期待されています。本研究の成果は新規なスピントロニクスや熱電変換機能を生み出す起源を探る新たな手法の提案であるとともに、放射光を用いたX線磁気分光や共鳴X線散乱の新たな可能性を拓くものです。

詳細については、以下をご参照ください。

関連リンク : 2021年度 物性実験(A4)
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