量子の渦、数えます!

研究成果 2023/09/16

東京大学大学院理学系研究科において西村俊亮大学院生、小林拓大学院生、佐々木健人助教、小林研介教授らは、東京工業大学工学院の辻赳行大学院生、岩﨑孝之准教授、波多野睦子教授らとともに、ダイヤモンド量子センサを用いて超伝導体の量子渦を広視野でイメージング(可視化)することに成功しました。

超伝導体における量子渦は、巨視的な量子現象の現れであると同時に、超伝導体の特性を理解する上で重要な情報を与えてくれます。その可視化には様々な技術が応用されてきました。本研究では、ダイヤモンド量子センサを用いた新技術により、超伝導薄膜内の量子渦から発生した磁場を広視野かつ高精度にイメージングすることに初めて成功しました。ダイヤモンド量子センサ基板の作製手法を工夫するとともに、その不均一性の影響を軽減する新しい解析手法を開発し、銅酸化物高温超伝導体の一つであるYBa2Cu3O7−δ(YBCO)薄膜中の量子渦を様々な温度・磁場においてイメージングしました。多数の量子渦を同時に観測し、一つ一つ調べた結果、量子渦の磁束が量子化していることを高い精度で実証しました。さらに、得られた量子渦の形状が理論モデルと整合することや、磁場侵入長の振る舞いが従来の結果と一致することから、開発した技術の正確性と幅広い適用性を証明しました。今回実証に成功した広視野イメージング技術は、幅広い温度・磁場範囲、高圧などの極限環境下でも有効であり、今後、高圧下における高温超伝導体への適用などの新しい超伝導体の開発や、その応用研究に役立つことが期待されます。

詳細については、以下をご参照ください。

関連リンク : 2023年度 物性実験(A4)
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